逍遙記
東日本大震災によせて《NaturalLife11_’11.4》
3月11日,東日本は記録的な大震災に見舞われました。太平洋沿岸は大津波によって壊滅的な被害を受け,多くの尊い命が失われました。ここ宇都宮でも震度6強の揺れを経験し,地区によっては家屋の損壊や亡くなられた方もありました。
報道で悲惨な状況を見聞きする度に心が痛みました。涙を流された方も多かったのではないでしょうか。また時には久々の救出情報や,復興へ向けて明るく頑張る人々の表情に感動の涙もあったことと思います。
未だかつて無いこれほどの震災で多くの人が心を傷つけられました。それによって精神の不安定や焦燥感,不眠,動悸などに悩む方もおられます。
心が傷ついたり,憔悴しているとき,最も力になるのはご家族や側にいる人の温かい心遣いだと思います。その温かい心には及ばないかもしれませんが,漢方的な対処法をご紹介します。
漢方用語の中に養心安神(ようしんあんじん)という言葉があります。この心(しん)は,五臓六腑の心を意味します。つまりドクドクと全身に血液を送る臓器のことですが,さらに心には神をつかさどる,換言すると精神活動の役割を担っているという考え方があります。緊張するとドキドキしたり,「胸を痛める」「胸を焦がす」といった表現からもご理解いただけると思います。そして何らかの原因で心が不安定となると,感情,思考,意識,判断などが乱れ,不安感や焦燥感,不眠,動悸,健忘などを生じるとされています。このときの治療法の一つが先に述べた養心安神です。心を養い,精神の安寧を目差します。代表的な生薬は,酸棗仁(さんそうにん)というナツメの種子を乾燥させたものです。とくにその種子が大きくなるサネブトナツメの種子を用います。また竜眼肉(りゅうがんにく)という生薬もよく使用されます。竜眼肉はライチに見た目も味も似た果実で,中国では桂円とも呼ばれ,よく食されます。これらの生薬は優しい風味が特徴で,一般に気力や体力を補う生薬と一緒に使用します。逆に刺激の強い薬草や食べ物,嗜好品などは,さらに心を乱す恐れがありますので慎まなければなりません。
地球の大きな営みが,地球に暮らす小さな生き物にとっては,時に恵みとなり,時に刃となって襲いかかってくる。改めて自然との付き合い方を考えさせられます。被災地の一日も早い復旧・復興を願ってやみません。
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研究報告・講演等
翻訳
- 小児疾患と湿熱の関係
(中医臨床第107号2006年12月20日 「略論湿熱在中医児科発病学上的意義」浙江省中医薬研究院 王英) - 卵管閉塞による不妊36例に対する中西医結合治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「中西医結合治療輸卵管阻塞性不妊症36例臨床観察」 劉軍) - 加味玉屏風湯による抗精子抗体陽性の女性患者57例の治療
(中医臨床第105号2006年6月20日 「加味玉屏風湯治療女性抗精子抗体陽性57例」広東省仏山市第一人民病院 謝普練 韓慧) - 解表剤運用の心得
(中医臨床第103号2005年12月20日 「解表剤運用心法」北京中医薬大学薬学系 倪誠) - 中医による難治性眼疾患の治療効果
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中医薬治療疑難眼病的療効簡介」中国中医研究院眼科医院) - 眼科領域における退翳明目法の応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「退翳明目在眼科的応用」山東中医薬大学付属医院眼科 郭承偉) - 「明珠飲」による内眼疾患の治療
(中医臨床第102号2005年9月20日 「中薬明珠飲治療内眼病挙隅」上海中医薬大学付属曙光医院眼科 潘雅?) - 名医の処方-疏肝解鬱益陰湯
(中医臨床第102号2005年9月20日 「疏肝解鬱益陰湯」河北省人民医院眼科 ?賛襄) - 明目地黄丸および益精昇陰法
(中医臨床第102号2005年9月20日 「明目地黄丸考証及応用-兼論益精昇陰法(二)」中国中医研究院眼科医院 高健生他) - 眼疾患に有用な方剤/石斛夜行丸方
(中医臨床第102号2005年9月20日 「試析石斛夜光丸方」北京中医薬大学東直門医院眼科 祁宝玉他) - 眼科領域における細辛の臨床応用
(中医臨床第102号2005年9月20日 「細辛在眼科臨床的応用」湖北省襄樊職業技術学院医学分院 汪碧涛) - 慢性前立腺炎の治療
(中医臨床第101号2005年6月20日 「中西医結合治療慢性前立腺炎的思路与方法」福建中医学院 戴春福) - 益気養陰清熱法を併用した急性骨髄性白血病の治療中医臨床
(中医臨床第100号2005年3月20日 「益気養陰清熱法輔助治療急性髄系白血病臨床療効観察」山東中医薬大学付属医院 徐瑞栄他) - 糖尿病性腎症の4大病機
(中医臨床第99号2005年3月20日 「糖尿病腎病腎小球硬化症的中医病機探討」上海中医薬大学付属龍華医院 劉玉寧) - 「気」の中医的概念と理気の方薬
(中医臨床第93号2003年6月20日 「緒論:中医的『気』与理気方薬」北京中医薬大学 王琦) - 「辛開苦降」の意味
(中医臨床第92号2003年3月20日 「辛開苦降」河北省浹水県医院中医科 劉興武) - 「風薬治血」-風薬による血病治療
(中医臨床第91号2002年12月20日 「風薬治血探微」瀘州医学院付属中医院 鄭国慶) - 老中医たちがもっとも得意とする生薬…それが黄耆
(中医臨床第89号2002年6月20日 南京中医薬大学 黄煌) - 補陽還五湯の応用
(中医臨床第89号2002年6月20日 「補陽還五湯治験2則」江蘇省常熟市中医院 李葆華) - 黄耆の運用経験
(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆的応用体会」南京中医薬大学 孟景春) - 黄耆の医案3例
(中医臨床第89号2002年6月20日 「黄耆医案3則」南京中医薬大学 黄煌) - 防已黄耆湯の解釈と臨床応用
(中医臨床第89号2002年6月20日 「防已黄耆湯」南京中医薬大学 蒋明・張国鐸) - 応用範囲の広い温胆湯
(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的臨床応用」江蘇省連雲港市中医院 趙化南) - 温胆湯の症例報告
(中医臨床第88号2002年3月20日 「温胆湯的症例報告」南京医科大学付属淮安第一医院 李樹年)
他
東洋学術出版社『中医臨床』
薬剤師・薬学修士・国際中医専門員
毛塚 重行Shigeyuki Kezuka
- 学歴
- 東京薬科大学薬学部薬学科卒業
金沢大学大学院薬学研究科(薬用植物園)修士課程修了
南京中医薬大学留学(2000~2002) - 職歴
- 吉祥寺東西薬局勤務(1996~2000)br毛塚薬局勤務(2002~2005)brさくら堂漢方薬局開設・ 運営(2005〜)br国際医療福祉大学薬学部非常勤講師(2020~2024)
獨協医科大学看護学部非常勤講師(2025〜 ) - 所属
- 日本中医薬学会
日本東洋医学会
日本中医薬研究会
栃木中医薬研究会
東亜医学協会
日本漢方連盟
日本薬剤師会
