漢方日記

四川省での漢方研修《NaturalLife18_’12.2》

冠元顆粒2011年2月末,中国四川省の省都である成都での漢方研修に参加しました。四川省は様々な生薬の産地であり,その一つに血行改善に優れる丹参(たんじん)があります。この時の研修は,丹参を主薬とした冠元顆粒(かんげんかりゅう)という漢方エキス製剤に関する学術シンポジウムへの参加と,製剤工場の見学が目的でした。

漢方エキス製剤というのは,生薬を組み合わせた処方を煮つめ,デンプンや乳糖などを添加し,顆粒や錠剤に成型したものです。一般に顆粒剤が多く,ちょうどインスタントコーヒーのような状態になります。古来煎じ薬や粉に挽いて飲まれてきた漢方薬と比較して効果が劣ると言われることが多いエキス製剤ですが,現在では各漢方メーカーの技術が発展し,煎じ薬等に負けないものも増えています。

 私たちが見学した製剤工場に於いても,生薬の厳選や抽出温度の管理から内袋・外箱のチェックに至るまで様々な工夫がなされていました。とくに,芳香成分を極力逃さずに封入する技術には大変感心させられました。通常薬草を煎じる時,香りはどんどん飛んで行ってしまいます。アロマ効果が注目されているように,芳香成分は薬効を考える上でも大変重要です。とくにストレスがたまっていたり,自律神経のバランスが崩れているような状態では芳香はなくてはならない要素です。煎じる際の臭いは兎角嫌われがちですが,芳香成分の多い煎じ薬では,煎じながら香りを感じることが大切になります。ですから,これを封入する技術は利便性とともに有効性を高めるのに大きく貢献していると言えます。

 成都では観光や郷土料理も楽しみました。パンダの生育研究基地では,本物のパンダに触れることができましたし,ドクダミの和え物を食べたのも大変印象的でした。

見学地の移動は主にバスを利用したのですが,その道中,しばしば話題に上ったのは,2008年に9万人近い死者を出した四川大震災と,訪中の数日前に発生したニュージーランドの大地震のことでした。東日本大震災は帰国して一週間後のことでした。