シナモンのなかまと漢方

様々な料理や菓子などに活用されるシナモンは、クスノキ科ニッケイ属の数種の樹木から採取される樹皮を利用した香辛料です。強い独特な芳香性から「スパイスの王様」と呼ばれることもあります。ニッケイ属の数種の樹木とは、セイロンニッケイやジャワケイヒ、シナニッケイなどが代表的なものとして挙げられます。これらは、東南アジアや南アジア、中国南部などで広く栽培されています。樹種により成分が多少異なるため、味や香りに違いがあります。

ヨーロッパではセイロンニッケイの樹皮のみをシナモンとし、シナニッケイ由来のものをカシアと呼んで区別します。

日本ではニッキ水やニッキ飴、そして京都銘菓の八つ橋などで楽しまれています。これらは元来ニッケイという樹種の根の皮を粉末にしたものが使われていましたが、現在はシナニッケイの樹皮が用いられています。

このシナニッケイの樹皮は漢方で最も重要な生薬の一つでもあります。生薬名は「桂皮(けいひ)」または「肉桂(にっけい)」です。さらに細い枝先を「桂枝(けいし)」と呼んで、異なる使い方をする場合があります。桂枝は桂皮と比べると風味が薄く、作用は穏やかです。

漢方薬のバイブルといえる『傷寒論(しょうかんろん)』の中で最初に紹介され、多くの紙幅を費やされる処方が「桂枝湯(けいしとう)」です。その構成は桂皮(または桂枝)、ショウガ、ナツメ、芍薬、甘草の五つの生薬で、古代からの香辛料・調味料の知識が活かされています。桂枝湯は発汗や気の流れを調節し、感冒などに応用されます。桂枝湯にクズの根である葛根(かっこん)と、発汗力に優れた麻黄(まおう)を加えれば有名な葛根湯です。さらに桂枝湯は様々な薬草を加減していろいろな処方に生まれ変わります。漢方の基本処方であるために、桂枝湯は「諸方の祖」と呼ばれ、特別な存在です。

桂皮は体を温めながら気や血の流れを促す働きがあるため、寒い時期に多用される生薬です。冷えのぼせの改善にも活用されますが、元来暑がりの人や出血をともなう症状がある人は注意が必要です。

現在日本でスパイスとして流通するシナモンもほとんどがベトナムや中国で栽培されるシナニッケイが用いられているそうです。心も体もホッと温まる素材です。

生薬「桂皮」:ベトナム産(左)は中国産(右)より肉厚で風味が強く良質とされる

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