コウホネとシモツケコウホネ

夏に黄色い花を咲かせる水生植物にコウホネがあります。コウホネは浅い池や沼に自生し、スイレン科に属しています。花は同科のスイレンやハスなどと比べると大分こぢんまりとしているのですが、がくも花弁も雄しべも雌しべも、花全体が鮮やかな黄色をしているので印象的です。

コウホネを漢字で書くと「河骨」となります。これは、地下茎を縦長に割り裂くと、白骨に似ているためという説があります。一方、平安時代に書かれた書物に中国産の「骨蓬」という生薬に「加波保称」という和訓を付しており、「河骨」はこの当て字とする説もあります。

コウホネを生薬として用いる場合、その使用部位は先ほど白骨に似ていると表現した地下茎の部分です。用いる目的は骨折なども含む打撲や捻挫に伴う腫れや痛みの改善です。生薬名はセンコツで、こちらは漢字で書くと「川骨」となります。使用頻度は決して高くはないのですが、川骨を含む処方として治打撲一方(ぢだぼくいっぽう)が有名です。

記録としては血の道症や疲労、感冒、胃腸疾患などの改善にも用いられるとありますが、現在はほとんどそれらの使用を目にすることはありません。また、同部位を食用にした文化もあるようで、アイヌの人たちは汁の実などにしたとのことです。

世界中で栃木県の数カ所にのみ自生するシモツケコウホネというコウホネの仲間があります。コウホネには水上に出る葉と水中に沈む葉があるのですが、シモツケコウホネでは水中に沈む葉しかありません。また雌しべや雄しべなどがやや赤みを帯びるのも特徴です。2007年に新種として登録されたのですが、絶滅危惧種でもあり、大変貴重な植物です。2014年に「種の保存法」による「国内希少野生植物種」に指定され、採集や所持、流通などは禁止されています。

自生地の一つである日光市の小代地区では、「シモツケコウホネと里を守る会」が組織され、積極的な保全活動が行われており、来訪者もその花を観賞することができるように整備されています。昨年、その地を訪れました。のどかな田園風景に包まれた水路のせせらぎに花期のシモツケコウホネを見つけることができました。きれいに整備された環境に、地元の方々の思いを感じます。小代地区は鹿沼市境に近い日光市南部。希少な植物を観賞する貴重な体験を皆様も楽しんでみてはいかがでしょうか。

写真:日光市小代地区のシモツケコウホネ