イカリソウと淫羊藿(いんようかく)

4~5月に白色あるいは紅紫色の印象的な花をつける山野草にイカリソウがあります。花の形が船の錨に似ていることから名付けられたとされています。また花だけでなく葉の形状も印象的です。三枝九葉草(さんしくようそう)という別名があり、3つに分岐した茎それぞれに3枚の小葉をつける様を表しています。植物学的には二回三出複葉と呼ばれる葉の付き方です。そして小葉の形がハートに似たかわいらしい形をしています。本来低い山地の雑木林に生えますが、花や葉の色形から園芸植物としても人気のようです。

イカリソウは薬草としても有名です。滋養強壮を目的にドリンク剤や薬用酒などにも多用されています。漢方では淫羊藿(いんようかく)という名で用いられます。淫羊藿はもともと中国原産の同属植物ホザキイカリソウを指す言葉で、生薬としては葉や茎が用いられます。

中国六朝時代の医学者であった陶弘景は「四川の北西部に淫羊という動物がおり、一日に百回も交合する。ある藿(豆の葉を意味する言葉)を食べるためであって、故にその藿は淫羊藿と名付けられた」と述べています。また中国では「放杖草」という別名もあり、杖が不要になるほど足腰が丈夫になるという意味が込められているといわれます。

中国医学の生薬の教科書には「体力を補って体を温め、インポテンツ、頻尿、不妊などに用いる。また筋骨を丈夫にして、関節の痛みやしびれを取り除く」と紹介されています。

淫羊藿を含む方剤には参馬補腎丸(じんばほじんがん)があり、虚弱体質や肉体疲労、病中病後、胃腸虚弱、食欲不振、血色不良、冷え症などの改善に用いられます。日本ではその他の淫羊藿を含む処方はあまりありませんが、中国ではよく使用される生薬の一つです。

私が大学1年生の頃、所属する植物研究部の先輩が学園祭でイカリソウ酒を販売しようと言い出しました。山へ行き、イカリソウを採集して焼酎に漬けました。そうこうしているうちに、別の先輩が酒を販売するのは法的にまずいと指摘し、この計画は中止となり、泣く泣く自分たちで処理したのを覚えています。私は酒が苦手であまり口にしなかったのですが、酒好きの同級生S君はかなり処理に貢献していました。ただ、S君は元々元気な人だったので、効果のほどは定かではなかったようです。

写真:イカリソウ(メギ科)日光植物園にて