漢方日記

ハスの薬用利用

夏に白色から淡紅色の花を咲かせるハス。暑い日差しの元にあっても、水上の佇まいはなんとも優雅であり、清涼感が漂います。ハスは古くはハチスと呼ばれたそうで、その語源は果托という果実の実り方にあります。

ハスの花は花を支える茎の先が膨大化した花托と呼ばれる部分に花弁やおしべ、めしべが付きます(写真①)。花の時期が終わると、果実の生長とともに花托も大きくなり果托(写真②)となります。この果托が一見蜂の巣に似ることがハチスの語源とされています。

写真① ハス 中央に丸い花托が見える

写真② 果実を蓄えた果托

ハスは身近な食品でもあります。ハスの根茎がレンコンです。また種子は「ハスの実」として流通しています。そのほか茎、葉、花なども食用とする地域があるとのことです。

中国ではハスの実そのものや、あるいは加工品をよく食料品店で見かけます。また時に、ハスの実を蓄えた果托ごと売られていることもあります。数年前の9月、中国のある観光地を訪れた際、ハスの実の入った果托が道ばたで売られていました。それを同行者が購入したため、果実を分けてもらい、生で食べてみました。果托から果実を取り出し(写真③)、皮を剥くと白い種子が現れます。種子を二つに割ると、その中央には緑の胚芽(写真④)が備わっています。胚芽の部分はとても苦みが強く、そのまま食すのには適しません。それでもその苦みを確かめたことに満足しました。というのも、ハスの胚芽の苦みは、こころを静め、安眠を導くとする中国医学の教えがあるためです。ハスの胚芽は蓮心(れんしん)あるいは蓮子心(れんししん)と呼ばれ、生薬として、あるいは茶材として使われています。

写真③ 果托を裂いて果実を取り出す

写真④ 種子の中央に胚芽がある

ハスの実として普通に食される種肉の部分は、蓮子(れんし)、蓮肉(れんにく)、蓮実(れんじつ)などと呼ばれ、こちらは日本の漢方薬にも含まれています。有名な処方には清心蓮子飲(せいしんれんしいん)があります。ただし蓮子は、胃腸虚弱で下痢をしやすいといった状態の改善に優れており、こころを静める作用は蓮心に及びません。

中国ではレンコンも生薬になります。生薬として使うのはレンコンの食べる部分ではなく、捨ててしまいがちな節の部分です。節だけを集め、藕節(ぐうせつ)という生薬名で、止血薬として用いられます。また葉は荷葉(かよう)という生薬名で暑さ負けの治療などに用いられます。

Natural Life No.119
(株)エーエスエーとちぎ中央発行『らいとプラザ』2021年8月号に掲載